ロバート・B・ライシュ『暴走する資本主義』(東洋経済新報社)を読んで
「近年、投資家・消費者としての私たち(資本主義)の活動が活発になる一方、市民としての私たち(民主主義)が疑問に感じる事象が多くなってきた。これを是正するためには、私たちは市民としての責任を考え、民主主義を守ろうとすることが肝要である。」というのが、本書の大まかな内容であろう。
以下感想。
1.冒頭部分にアメリカの資本主義と民主主義の進展について書かれているが、
「かつてのアメリカはこんなにも「日本的」だったのか!」
と、思った。
私の中では「アメリカ=グローバル資本主義の権化」というステレオタイプ的な図式化がされていたが、かつてのアメリカでは終身雇用や年功序列的な賃金体系など、「日本的」な要素をかなり多く持っていたようである。
2.本書全体を通して、
「アメリカで起きる事象は未来の日本を見せてくれている。」
と、感じた。
高い評価を受けている本書をようやく購入したのはたまたま古本屋で見かけたからであるが、内容があまりにも現在の日本にピタリと来るのである。
この本の原書が出版された2007年(戦後最長の好況、超売り手の就職市場の時代)の段階でこれを読んでもたぶんピンと来なかったと思う。
最近、「資本主義と民主主義の対立構造」についての書籍が多く見られるようになったが、アメリカでは5年以上も前にこうした内容が出版されていたのである。
なお、筆者自身は「私たちは活気ある民主主義と力強い資本主義を同時に享受することができる」と考えている。
私もそうであってほしいと思う。
本書の内容から以下のような行動に繋げたいと感じた。
1.市民的立場のある自分が「問題である。」に感じたことがあれば、「消費者・投資家としての自分の行動に責任はないのか?」を考える。
2.1.で感じたことを解決するための手段を考える。関係する書籍を読むといった個人的活動から選挙、集会、デモといった政治的活動が考えられる。
「東京・大阪だけが日本ではない。」と言うが、「ニューヨークやハリウッドだけがアメリカではない。」
まずは報道されているレベルから「アメリカで何が起きているのか?」を知ることが、今後の日本を知ることに繋がるのではないかと思う。